最終章 Kei Sport CUP突然の消滅


2004年4月26日の午前中のことです。S.M.A(スズキモータースポーツアソシエーション)からのメールで、エントリー完了していた北日本シリーズ第2戦中止決定の連絡を受けました。北日本シリーズ第2戦の開催日は5月1日。開催日5日前の中止決定です。

- - - - - - - - - <受信メールの内容> - - - - - - - - -

「5月1日に開催予定でありました北日本シリーズ第2戦でありますが、本日メーカーより急遽中止としてほしいとの連絡が、S.M.Aにありました。 〜中略〜 東日本第2戦につきましても現在のところ何とも言えない状況であります。状況が確定次第ご連絡申し上げます。」

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その日の午後、S.M.Aのサイトで各地区の第2戦中止の発表。中止の理由は一切公表されませんでした。

その後、北日本第2戦と東日本第2戦のエントリーフィーが現金書留で全額返却され、第3戦開催の案内が同封されておりました。

一安心すると共に、2004年6月9日に東日本第3戦へエントリー。翌日、S.M.Aからエントリー完了のメールをいただきました。ところが2004年6月18日、スズキのサイトでビックリの発表が。リコール自体には驚きませんでしたが、その改善内容にビックリ...。


SUZUKI WEB SITE リコール等情報のページから引用

Kei(KeiスポーツR)のリコールについて(平成16年6月18日届出)

平成16年6月18日、国土交通省にKei(KeiスポーツR)のリコールを届け出致しました。

ご愛用の皆さまには、大変ご迷惑をおかけし、心よりお詫び申し上げます。対象となるお客様には、お知らせのダイレクトメール、またはスズキ販売店等からご案内させていただきますが、お早めに、最寄りのスズキ車販売店へご連絡いただき、修理(無料)をお受けいただきますようお願い申し上げます。

1. 不具合の状況
  サーキット走行等による過大な荷重に対するフロントハブの強度が不足しているため、サーキット走行等を繰り返すと、当該ハブが破損することがあります。そのため、駆動力をフロントタイヤに伝えることができなくなり、一般公道走行時に走行不能に至るおそれがあります。
 
2. 改善の内容
  全車両、サーキット走行用装置(ロールケージ、4点式シートベルト、牽引フック)を取り外し、ステアリングナックルアッシを新品と交換します。
 
3. 対象車両
車名 型式 通称名 リコール対象車の車台番号
(シリアル番号)の範囲及び製作期間
リコール
対象車の
台数
備考
スズキ TA-HN22S Kei HN22S-700028〜HN22S-781273
平成13年4月9日〜平成16年4月27日
572  
合計 572  

(備考)
 本車両は、一般公道走行、サーキット走行の両用の車両として販売されていたKeiスポーツRです。

改 善 箇 所 説 明 図

〜省略します〜

<ご注意>
対象車の含まれる車台番号の範囲には、対象とならない車両も含まれる場合がありますので、
詳しくは最寄りの販売店にお問い合わせください。
対象車の製作期間は、ご購入の時期とは異なります。


そして2004年6月19日、S.M.AのサイトでKei Sport CUPレース終了の発表がありました。


S.M.A エントラントインフォメーションのページから引用

スズキ ワンメイクレースシリーズ
エントラント及び関係者各位

 拝啓 貴下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素はKei Sport CUPにご参加いただき、誠にありがとうございます。

 2004 Kei Sport CUP 各シリーズ第2戦につきましては、レース中にフロントハブを折損した車両が出たことを受け、レース参加車輌の安全確認を実施するため中止の措置を取らせていただきました。

 この結果を踏まえ、このたびKei Sport R(TA-HN22S)に対し、フロントハブに関するリコールがスズキ株式会社より6月18日付けで発表されました。皆様への中止理由の説明につきましては、車両の調査、解析に日数を要しましたため、大変遅くなってしまいましたことを深くお詫び申し上げます。

 Kei Sport CUPにつきましては車両ならびに人員の安全を確保するために、シリーズ途中ではございますがレースを終了させて頂きたいと存じます。

 尚、リコールにつきましては、最寄りのスズキ代理店までご相談いただきますようお願い申し上げます。

 エントラントならびに関係者の方々には多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。ご理解とご協力の程、宜しくお願い申し上げます。

敬具


■以下は自分がお客様相談室へ電話で質問した内容と回答です。

質問日時: 2004年6月21日14:03

(Q:自分、A:お客様相談室)

Q1 サーキット走行用装置を取り外す理由は何ですか?
A1 サーキット走行を行うとハブを破損する恐れがあるため、ベースの状態に戻してお渡しするということです。

Q2 それは販売時点での使用目的を変更するということですか?
A2 そうです。

Q3 取り外した部品は返却されますか?
A3 はい。外した状態で返却します。

Q4 もうサーキットは走行するなということですか?
A4 いいえ。ただし、メーカーとしては推奨できませんので、自己責任でお願いします。

Q5 交換するステアリングナックルアッシは対策部品ですか? それとも単なる新品ですか?
A5 単なる新品です。

Q6 来年以降、シリーズが再開される可能性はありますか?
A6 ないと考えてください。

Q7 メーカーとして車両を買い取る意思はありますか?
A7 販売に関しては販売店にお任せしていますので、買取に関しても販売店にご相談ください。自販等のディーラーさんがいいと思います。

Q8 買取の件はディーラーによって対応に差が出ることはありますか?
A8 ディーラーさんはメーカーの意向で動いておりますので、対応に差が出ることはありません。

上記のメーカー回答で「Q2」に注目してください。

販売時点で一般公道走行とサーキット走行の両用をうたっていた車両の用途を一般公道走行専用に変更すると認めています。

もし貴方が自宅に冷暖房兼用エアコンを購入したとします。その後、冷房機能に不具合が発見され、そのまま使用すると火災の危険があると発表されました。メーカーは冷房機能部分を単なる新品部品に交換しただけで、暖房専用として使用してくれと言ってきました。どうします?納得できますか?詐欺ですよね?

対策部品への交換が無理なら製品回収がメーカーの採るべき責任だと思います。


■以下は自分が最寄のディーラーへ電話で質問した内容と回答です。

質問日時: 2004年6月22日16:24

(Q:自分、A:スズキ自販茨城日立南営業所)

Q1 自分の所有するKei Sport Rの車体番号はHN22S-700810ですが、リコールの対象に入っていますか?
A1 お客様のワークスはリコールの対象です。
(自販の担当は「ワークス」と言いましたが、「Kei Sport R」の間違いです。このディーラーでは、車名を把握していないようです。)

Q2 リコールの対応についてお聞きしたいのですが?
A2 発表と同じ内容の説明でしたので省略しますが、以下の点について念を押されました。
「ロールケージを外さないと部品交換ができないことを了解ください。」
なんかニュアンスが違う...。

Q3 お客様相談室から買取についてはディーラーと相談するようにと伺ったのですが、メーカーからどのような指示を受けていますか?
A3 そのようなことは何も聞いておりませんので、然るべき部署に問い合わせて連絡します。

その後、連絡はありません。


■以下は自分がS.M.Aへ電話で質問した内容と回答です。

質問日時: 2004年6月22日17:05

(Q:自分、A:S.M.A)

Q1 スズキスポーツで強化部品を製作し、シリーズを継続することはできなかったのでしょうか?
A1 強化部品の製作は可能ですが、スズキスポーツが製作するとレース専用部品になってしまいます。ナンバー付きの車両には装着できません。

Q2 車両を手放すか維持するか悩んでいます。過去のアルトワークスのようにナンバーなしのレースとして再開する予定はありますか?
A2 検討はしましたが積載車が必要になるという問題があると思いますので...。

今さらその方向に展開しても...。というニュアンスでした。

その他、多少の質問をしたのですが、今回のメーカー意向による二転三転で歯切れの悪い受け答えしかできない感じでした。なんか申し訳なく思えてきたので電話を置きました。


■その後の状況


(2004年6月23日)
購入店(ウチの車両は中古)を通して、スズキ自販茨城水戸営業所から車両本体を80万で買取の打診がありました。後付部品については何も言ってなかったので回答は控えました。当然のことながらレース指定部品と推奨部品も買取対象じゃないとおかしいですよね?
今後も何か動きがあったら追記します。ところでスズキ自販茨城日立南営業所はどうなってんだ?音沙汰なし...。

(2004年6月26日)
とりあえず後付け部品で他車へ流用のできる部品を外します。で、問題発生。水温計のセンサーを外すためには、ラジエターのアッパーホースを新品へ交換しなければなりません。
どこで部品を発注? 何も連絡をくれない前述の日立南営業所へ出向くのは癪に障るので、日立北営業所へトゥデイでお出掛け。
さりげなく車体番号だけを告げて部品発注。そしたら...。バレてしまいました。所有者のリストが回っていて住所氏名を把握済み。ただし、管轄が違うので訪問しなかったとのこと。
水温センサーの事情を話し、部品だけの購入依頼。するとこんな説明が...。
「上層部の方針で、何か問題が発生したら回収してベース車に戻すということを前提に販売した車両なので、回収をお願いすることになります。その車両にこれ以上お金をかけていただくのは申し訳ないので、アッパーホースが外れたままの状態で放置しておいてもかまいません。」と言われました。
ですが自分としては回収のときに完動の状態にしておきたいので、丁重に部品発注をお願いして帰ってきました。
で、ディーラーとの話の中でスイフトに乗り換える気はないのか聞かれましたが、スイフトカップって来年もあるの? S.M.Aは暮れのモータースポーツ活動発表会まで答えられないって言ってましたが...。

(2004年7月2日)
日立北営業所のサービスマンから「Kei Sport R用のラジエターアッパーホースの品番が分からないので取寄せできない」という電話をいただきました。
発注してからほぼ一週間もたつのに何言ってんだ?と思ってたら、このサービスマンが「Kei Sport用でしたら取寄せできますが」という提案をしてきました。
実は事前にターボ用もノンターボ用も同じ品番であることを確認済みだったので、その提案を受けると、「でもSport R用は耐圧とかが違うかもしれませんので、高速走行に耐えられないかもしれませんよ」とノタマイました。
自分から提案しておいて何を言ってるんでしょう? 呆れてブチ切れる気にもなりませんでした。めんどーだし、待ちくたびれたし、早く欲しかったので、Kei Sport用を発注しました。

(2004年7月9日)
最初に問い合わせをした日立南営業所は「連絡をします」と言ったきり未だに音沙汰なし。もう17日目です。日立北営業からも部品入庫の連絡なし。スズキ自販ってどんな会社?
別のカテゴリーへ移行する都合もあるし、待ちきれなくなってきたので、購入店と相談し、水戸営業所へこちらの要望を伝えることにしました。
購入店へ打診のあった車両本体80万円は納得するとして(でも何で車両の持主へは打診して来ないんでしょう?)、レース参戦のために取り付けた部品のリストを作成し、どこまで買い取ってもらえるかの検討をお願いしました。
買取検討をお願いした部品リストの内容は、スズキスポーツの指定・認定・推奨部品とシートレールなど他車へ流用のきかない他メーカー製のHN22S専用部品。
部品はすべて自分で取り付けたので工賃の請求はなし。ダメもとで4月に受けた車検代を追加してみました。

(2004年7月14日)
初めてメーカーサイドから連絡が来ました。リコール発表からほぼ一ヶ月。電話をしてきたのは水戸営業所の担当からで、取り付けた部品の購入年を教えて欲しいとのこと。使用年月によって買取額が異なるそうです。
車検代については認められるかどうか分からないので、本社に問い合わせてみるとおっしゃってました。

(2004年7月16日)
ラジエターのアッパーホースを発注してからほぼ3週間。サービスマンの言うKei Sport用で妥協してから2週間。日立北営業所も日立南営業所とおんなじ。まったく連絡をくれません。
待ちきれず電話を入れると、「昨日の午後の便で入荷しました。」との返事。
だったら連絡しろよ! この程度の部品の取寄せに、こんなに時間がかかるものなのでしょうか?
製造が打ち切られたヒストリックカーじゃないんだからさ。現行車ですよスズキさん。

(2004年7月18日)
購入店を通してスズキ自販水戸営業所から後付部品に関する買取額の提示がありました。社外品も含め、購入年数に応じて定価の70〜100%の金額です。車検代も認めていただけました。

自分としては納得のできる金額でしたので、これで交渉成立としたいと思います。


■後記

シーズン途中でのレース消滅、その後のメーカー方針に不満は残りますが、冷静に考えると、買取に関する限り良心的な対応だったと思います。

今後このようなことが他のNゼロレースに発生・波及しないことを祈りつつ、次のカテゴリーでチャレンジを続けたいと思います。

Kei Sport CUPに参戦されていたエントラントの皆さん、また別のカテゴリーでバトルできるといいですね。



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